申立の実例【郵便物等の回送嘱託申立】

弊所は、家庭裁判所への成年後見開始申立や、後見人などへの就任を通じて、ご高齢者や知的・精神障がい者の方々の生活と権利をお守り出来るよう日々尽力させていただいております。今回は、後見人就任中の申立実例についてご紹介いたします。

弊所で後見人に就任していたAさんに、以下のような問題が起こりました。


・Aさんは当時入院中だったが、在宅復帰の可能性が極めて低かったことから弊所で居住用不動産処分許可申立を行った。賃貸借契約を解除、退去手続きを行い自宅がない状態。

・入院していたのは急性期病院のため療養可能期間が定められており、住民票異動可能な施設への4か月後の入所の目途が立っていた。

郵送物が以前の自宅に届いてしまう入所までの期間だけ、ご兄弟のBさんご自宅を郵送物の転送先とさせて頂けるか相談するも、「私も高齢だし、郵便物以外のことも自分で管理することが年々難しくなってきている。もしAの大切な書類が転送されてきたとしても、失くしてしまったり、放置してしまうのが心配なので転送先とするのは難しい」との回答だった。


もしかしたら、「今後後見人がご本人の財産管理をするのだから、後見人の所へ転送すれば問題ないのでは?」と思われる方もいらっしゃるかもしれません。しかしながら、後見人が就任したとしても通常、ご本人宛ての郵便物が成年後見人のもとに転送されることはありません。ですので弊所では、郵送物を代わりに管理することのできるご親族に相談の上、住民票を異動出来る施設が決まるまで暫定的にご親族のご自宅宛を郵送先として指定させて頂くことがあります。今回も同様のケースですのでご兄弟のBさんに相談するも、ご協力が得られない状態でした。

後見人は就任後1か月以内の「初回報告」や、年一度の「報酬付与」の定期報告の際に、ご本人の財産、収支状況を家庭裁判所に報告する必要があります。これら各種報告を的確に行う為には、ご本人宛ての郵便物を開封し、それをもとに財産などを把握する必要があります。

そこで当初より4か月後の施設入所の目途がたっていたことから、以下民法に基づいてある申立を行うことにいたしました。

民法第860条の2【成年後見人による郵便物等の管理】

 

① 家庭裁判所は、成年後見人がその事務を行うに当たって必要があると認めるときは、成年後見人の請求により、信書の送達の事業を行う者に対し、期間を定めて、成年被後見人に宛てた郵便物又は民間事業者による信書の送達に関する法律第2条第3項に規定する信書便物(次条において「郵便物等」という。)を成年後見人に配達すべき旨を嘱託することができる。

 

② 前項に規定する嘱託の期間は、6箇月を超えることができない。

 

③ 家庭裁判所は、第1項の規定による審判があった後事情に変更を生じたときは、成年被後見人、成年後見人若しくは成年後見監督人の請求により又は職権で、同項に規定する嘱託を取り消し、又は変更することができる。ただし、その変更の審判においては、同項の規定による審判において定められた期間を伸長することができない。

 

④ 成年後見人の任務が終了したときは、家庭裁判所は、第1項に規定する嘱託を取り消さなければならない。

 

 

こちらでは、成年後見人が家庭裁判所の審判を得て、成年被後見人宛の郵便物の転送を受けられるとしており、転送を受けるためにする申立は「成年被後見人に宛てた郵便物等の回送嘱託申立」と言います。

しかしながら、以下3点に気をつけなくてはいけません。

「ゆうパック」などは「郵便物」に該当しないので転送の対象には含まれません。

 

・回送期間は6か月を超えることができないとされており(同条2項)、伸長は認められておりません。

・回送嘱託を申し立てることができるのは、民法860条の2第1項が「成年後見人」に限定されており、保佐人、補助人、未成年後見人は回送嘱託を申し立てることはできません。

申立ての理由を「後見人が郵便物を確認できないこの状況では、適切な財産管理をすることが困難で、Aさんがいずれ損害を受ける可能性もある」として申立を行い、家裁より以下のような審判書を受領いたしました。

この審判をもってなんとか入所までの期間を乗り切り、無事4か月後にAさんは住民票を異動できる施設に入所出来たので、施設への住民票異動の手続きを行いました。

これからも、どんな問題も解決すべくご本人に寄り添った支援を行ってまいります。

「遠方に住んでいる高齢の親族の支援が難しい・・・」「身寄りがいない・・」などお悩みの方は、経験豊富な司法書士法人トラストがお手伝いいたしますので、お気軽にお問い合わせください。