実例!成年後見制度【よくあるご質問~本人財産からの支出について~】

Q.

私には、認知症の母がいますが、遠方に住んでいるため、身の回りのお世話は母と一緒に暮らしている兄にお願いしています。しかし、母の支援をしている兄自身も高齢になり、支援に限界を感じているため、今後の事も考えて後見制度の利用し、専門職の方に後見人をお願いしたいと考えています。また、自宅での生活にも限界を感じているため、母には今後は施設に入所し生活をしてほしいなとも思っております。

現在の母の生活費については、母には年金収入の他に家賃収入があるのと亡父が残してくれた財産があるので、それを生活費に充てているようです。

母が後見制度を利用し、施設入所した後も、兄は定期的に面会行き、身の回りのお世話をしていくので、いくらか手間賃として毎月送金してほしいと話していました。私としても、遠方に住んでいて、兄にお願いするしかないので、多少は仕方ないかと思うのですが、そのようなことは後見制度を利用しても可能でしょうか?

 

A.

成年後見制度はご本人の財産や利益を守るための制度のため、ご本人に係る費用以外の支出は原則出来ません。

実際にトラストでは、ご本人のための物品購入費やご本人への面会時の交通費や宿泊費につきまして、立替金として請求いただければ後見人がご本人の財産よりお支払いさせていただいております。しかし、金額にかかわらず、お立替の前に必ず後見人に立替購入する内容や金額をご相談頂き、レシートなどの立替金額が確認できる書類をご提示お願いしております。

また、ご本人の財産を守るため、ご本人の財産からの5万円以上(目安)の高額な支出の場合は、ご本人のための支出であっても家庭裁判所の承諾を得てからでないと、支出が出来ません。この場合にも、購入や修繕などの契約の前に必ず後見人にご相談頂き、見積書など支出予定金額が確認できる書類を頂戴しております。その後に、家庭裁判所の承諾を得るため、急な対応を求められてもなかなか難しいです。金額の大きい出費が見込まれる場合には、早めに後見人にご相談いただくようお願いしております。

 

その他にも本人の財産からの支出に関して過去にこんな事例がありました。

・扶養家族への高額な送金の要望…扶養家族の財産状況のご提示と送金額の根拠となる支出内訳の確認が必要となり、家庭裁判所の許可をいただいてからの支出となります。

・財産に余裕があるご本人からお金を一時的に借りたい…ご本人に財産が十分にあり、将来的に枯渇することがないような方でも、もし万が一、返済されなかった場合に本人は不利益を被ることになるため、少額であってもお金を貸すことは原則できません。ただし、ご本人からの強い希望があった場合には、家庭裁判所の許可をいただく必要があります。

・ご本人には不要と思われる支出(例:施設入居しているご本人の衣料を伊勢丹などの高級百貨店で購入したい)…支出出来ないため、一般的な衣料品店でご用意いただいております。ただし、ご本人の強い希望やこだわりがある場合には財産状況と照らし合わせ、必要に応じて家庭裁判所の許可をいただいております。

 

今回のご相談内容のように、ご本人のためを思って色んな支援、お世話をしようと動いていただいても、実費以外のお礼として本人の財産からお支払いすることは難しく、ご本人からのお礼をしたいというご要望があれば、お菓子等の贈答品でご対応いただくことが多いです。

しかし、後見制度を利用して、このような厳格な財産管理を行うことで、万が一の親族による使いこみを防止し、将来の相続時のトラブルを防ぐことにも繋がります。

「遠方に住んでいる高齢の親族の支援が難しい・・・」「身寄りがいない・・」などお悩みの方は、

経験豊富な 司法書士法人トラストがお手伝いいたしますので、お気軽にお問い合わせください。