相続人がいない場合、財産はどうなる? 【成年後見の終了について】

弊所は、家庭裁判所への成年後見開始申立や、後見人などへの就任を通じて、ご高齢者や知的・精神障がい者の方々の生活と権利をお守り出来るよう日々尽力させていただいております。

今回は、被後見人がお亡くなりになったとき、相続人が一人もいないケースについてご説明いたします。

                                        

 

・被後見人Aさんがお亡くなりになりました。

“被後見人が亡くなると、その時点で成年後見は終了しますので、被後見人の財産を相続人に引き継ぐことになります。“

→しかし、Aさんの相続人は誰もいません。

このように相続人が誰もいない場合、被後見人Aさんの財産の行方はどうなるのでしょう?

                                        

 

まず、戸籍謄本などを収集し、被後見人に相続人がいないかどうか確認した上で、相続人が誰もいなかった場合、「相続人不存在」の状態になります。これは相続人全員が相続放棄をしていた場合や相続人が相続欠格・推定相続人の排除により相続資格を失っている場合も含みます。

このように法定相続人になる者がいないとき、後見人は、民法952条の利害関係人として、家庭裁判所に「相続財産清算人」の選任申立てを行うことになります。

これは、その名の通り、故人の相続財産を管理する者のことで、相続財産清算人には,通常,弁護士や司法書士が選任されます。

この相続財産清算人が相続人や相続債権者を捜索し、また、故人が生前深く関わりのあった「特別縁故者」がいないか確認しますが、一定期間それらの者が現れなければ、遺産は最終的に国庫に帰属することになるのです。

 

では、相続財産清算人について詳しく説明していきます。

 

 

〇相続財産清算人とは

 

民法は「相続人があることが明らかでないときは、相続財産は、法人とする」と定めています(民法951条)。相続財産清算人はその相続財産法人を代表し、管理する者です。相続財産清算人は、相続人を探し出し、見つからなければ清算手続を行い、最終的に残った財産を国庫に帰属させる手続を行います。相続財産清算人について法律上、特別の資格が必要との規定はありません。被相続人との関係や利害関係の有無などを考慮して、相続財産を清算するのに最も適任と認められる人が選ばれます。

 

今回のケースでは、被後見人Aさんの財産を管理していた成年後見人は、Aさんの死亡後に、引き続き財産を管理する必要があるため、成年後見人から家庭裁判所に対し、相続財産清算人の選任申立を行い、相続財産清算人に選任されました。

 

〇相続財産清算人の流れ

相続財産清算人は、管理者のいない遺産を国庫に帰属させるまでの一連の管理事務を、相続財産法人を代表して執り行います。大体の流れは以下のとおりになります。

①家庭裁判所による公告

②相続債権者・受遺者に対する弁済に関する手続き

③特別縁故者への財産分与、最終的な国庫帰属

④管理終了報告書の提出

 

以上のように、被後見人が亡くなり、相続人がいない場合は最終的に国へ帰属することになってしまう可能性が高いです。

生涯未婚の方や独居高齢者が増えている昨今、遺言書を記して死後の財産の行き先をあらかじめ決めておくことはますます重要になっています。

 

遺言書がなければ、遺産は最終的に国のものになってしまいます。たとえ何年お世話になっていても、身内でなければ介護や身の回りのお世話をしてくれた人に相続権はありません。きちんと遺言書を書いておくことで、お世話になった人に感謝の気持ちとして財産を渡すことができるのです。

 

今回、成年後見の終了時の対応をご紹介しましたが、遺言のように生前に対策を取っておくことが有効となるのは、何も成年後見に関わる方に限りません。

 

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