任意後見制度について
回は、任意後見契約についての事例をご説明いたします。
・相談者Aさん(73歳)には婚姻歴がなく、子供もおらず、長年一人で自宅にて暮らしてきました。両親は既に亡くなられていて、兄弟もおりませんでした。
・現在、Aさんは健康面や判断能力に問題ありませんが、今後、自分が認知症になった場合に備えての今のうちから対策をしておきたいとご相談がありました。
Aさんのように判断能力が十分にあるうちに、将来のご自身の認知症や障がいの場合に備えて、あらかじめご本人自らが選んだ人(任意後見人)に、代わりにしてもらいたいことを契約(任意後見契約)で決めておく制度【任意後見制度】というものがあります。
~任意後見制度を利用する流れ~
①任意後見契約を結ぶ
ご自身の判断能力が十分にあるうちに、将来、判断能力が低下した際に任意後見人としてお願いしたい方、また、その任意後見人の権限(任意後見人にお願いしたいこと、手続き等)もあらかじめ決めて、任意後見契約を結びます。なお、任意後見契約は公証人が作成する公正証書によって結ぶものとされている点が大切です。
② 認知症や精神障害などによって、ご本人がひとりで決めることに不安が出てきたとき(判断能力が落ちてきたとき)には任意後見監督人を選任することができます。選任するためには家庭裁判所に任意後見制度監督人選任の申立てを行います。
◇申立人
・ご本人(任意後見契約のご本人)・配偶者・四親等内の親族・任意後見受任者
◇申立先
・ご本人の住所地の家庭裁判所
弊所では、定期的にご本人とお会いし、本人や生活の様子をみて、任意後見契約を発動する必要があるかどうか確認するために、見守り契約を一緒にご案内しております。
③任意後見監督人の選任
任意後見監督人が選任されることによって、任意後見契約が発動され、契約で定められた任意後見人が、任意後見監督人の監督の下に、契約で定められた行為をご本人に代わって行えます。任意後見監督人が選任される理由には、任意後見人による不正、横領を防ぐ目的があります。また、報酬について、任意後見人の報酬は任意後見契約のなかで取り決めますが、任意後見監督人の報酬は本人の財産のなかから家庭裁判所が決定した額が支払われる点に注意が必要です。
また、今回のAさんの場合には、ご本人が亡くなった後を考えて、こんな手続きも行いました。
遺言
ご自身が亡くなった後、Aさんの場合相続人がいないため、遺言を作成し、遺産をご本人のご希望に添えて残せるように準備いたました。
死後事務委任契約
Aさんのような親族、身寄りがいない方の場合に、ご自身が亡くなった後の事務手続を、第三者に依頼する契約があります。
死後事務手続きとしての例…
- 亡くなったことを関係者(自治会や本人を支援している福祉関係者等)に通知、連絡
- 葬儀、火葬の手配
- 死亡届の提出
- 医療費や公共料金などの支払い
- 墓じまい、納骨
- 遺品処分
- 遺されたペットの引き継ぎ先への引き渡し
- サブスクリプションやSNSアカウントの解約・削除(アカウントIDやパスワードの保管、引継ぎが大切です。)
なお、尊厳死を希望される場合には、こういった将来に備えた準備をするなかで尊厳死宣言書を作成する方もいらっしゃいます。
人生100年時代と言われているご時世で、今は元気だけれども、将来万が一判断能力が落ちてしまったことを考えたい方、とくに身寄りがいない方は任意後見契約を検討してみてはいかがでしょうか。
「遠方に住んでいる高齢の親族の支援が難しい・・・」「身寄りがいない・・」などお悩みの方は、経験豊富な司法書士法人トラストがお手伝いいたしますので、お気軽にお問い合わせください。
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