成年後見人の職務が終了するとき

弊所は、家庭裁判所への成年後見開始申立や、後見人などへの就任を通じて、ご高齢者や知的・精神障がい者の方々の生活と権利をお守り出来るよう日々尽力させていただいております。

成年後見人は、判断能力が不十分な人を法的に保護するための成年後見制度において重要な役割を果たしますが、成年後見人が終了するときにはどのような条件が必要なのでしょうか。

 

成年後見制度の終了原因として、大きく分けると、「ご本人が後見を必要としない状態になる場合(絶対的終了原因)」と、「後見そのものは終了せず、後見人の交替が生じる場合(相対的終了原因)」の二つがあります。

今回の記事では、成年後見人の終了事由について解説します。

 

(1) 成年後見人そのものが終了する場合(絶対的終了原因)

【後見開始の審判の取消し】

被後見人の判断能力が回復し、成年後見人からの保護を必要としない状態になった場合は、成年後見そのものが不要となります。ご本人の症状が軽くなり保佐や補助が適当となれば、保佐や補助に変更することもあります。

 

後見等開始の原因が消滅したとき(本人の判断能力が回復したとき)、家庭裁判所は、ご本人や成年後見人、被後見人の配偶者、親族、検察官などの請求で後見開始の審判を取消さなければならず(民法第10条)、成年後見そのものが終了します。

 

【成年被後見人の死亡】

成年被後見人の死亡によっても、当然に、成年後見そのものが終了します。本人の死亡により後見が終了した際は、その旨を家庭裁判所へ連絡し、家庭裁判所の指示に従って書類を提出することになります。

 

(2) 成年後見自体は終了しないが当該成年後見人が辞任する場合(相対的終了原因)

【成年後見人の死亡】

成年後見人の死亡によっても、当該成年後見人による後見が終了します。

本人の判断能力が不十分である限り、一度成年後見人が選任されると、本人がご存命の間の後見制度はずっと続きます。成年後見人が死亡した場合は、後見人の相続人が終了後の事務処理を行い(民法645条、同874条)、また、相続人など利害関係人等の請求により、家庭裁判所が後任の後見人を選任することになります。

 

【後見人の解任】

成年後見人に不正な行為や成年後見の任務を行うことに適さない事由が生じた場合は、成年後見人の解任が可能です(同法第846条)。

 

解任にあたって、関係者(本人・その他親族等)から家庭裁判所へ請求することにより解任することができ、また、家庭裁判所の職権によっても解任することもできます。

例えば、本人の財産をギャンブルに使ったり、成年後見人や親族の借金返済のために使ったりするなどの本人の財産を流用するような不適切な行為、成年後見人の義務を果たさなかった場合等が該当します。

 

なお、成年後見人を解任する場合は、他に後見人がいなければ、後任の後見人請求を家庭裁判所へ請求する必要があります。

 

【後見人の辞任】

成年後見人は、正当な事由がある場合は、家庭裁判所の許可を得て辞任することが可能です。(同法第844条)なお、辞任する前任者は、後任の成年後見人の選任を家庭裁判所に請求しなければなりません。(同法第845条)

例えば、後見人が病気や高齢になった場合、遠隔地に転居した場合などで後見事務を円滑に行うことができなくなった場合には、正当な事由があるとして辞任することが認められます。

成年後見人が辞任する場合は、家庭裁判所に辞任の許可を求める審判の申し立てを行なうと同時に、後任の後見人の選任を請求する必要があります。

 

【成年後見人の欠格事由に該当した場合】

成年後見人は、財産管理や身上監護といった職務を適正に行う必要がありますので、適格のない者を予め除外しておく必要があります。

次に該当する人は、後見人から除外されます(同法第847条)。

・未成年者

・家庭裁判所で免ぜられた法定代理人、保佐人・補助人

・破産者

・被後見人に対して訴訟をし、又はした者その配偶者と直系血族

・行方の知れない者

 

〇さいごに

現時点では、一度成年後見制度の利用が開始すると、上述以外の理由では制度の利用が終了することはできません。

しかし、この点については、現在議論がなされているところであります。例えば、遺産分割協議などの重要な法律行為を行うところだけ成年後見人が対応し、相続手続きが無事完了すれば退任するといったスポット的な運用も考えられるところではありますが、今のところそのような取扱いはありませんので申立時には注意が必要です。

 

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